プロ野球スカウトの眼はすべて「節穴」である 片岡宏雄 双葉新書 元ヤクルトスワローズ スカウト

2011年2月発行

ヤクルトスワローズのスカウトとして2004年まで33年間

若松勉
尾花高夫
池山隆覚
川崎憲次郎
古田敦也
高津臣吾
岩村明憲
藤井秀悟

らを発掘、スカウト部長、編成調査役を歴任した

片岡宏雄氏

の著書です

野村氏の著書・テレビの特集などは

野村再生工場
弱者の兵法
ID野球

など良いイメージの内容ばかりですが、この片岡氏の著書にはヤクルト監督時代の野村克也氏を批判する内容も多く書かれており、野村氏と本当に仲が悪いようで、著書で野村氏に対して「野村克也」と敬称が一切書かれておりません

有名な話だが、野村氏は古田敦也獲得に際し

「眼鏡の捕手は大成しない」

と獲得に難色を示したのは有名な話で、片岡氏もドラフト前の会議でこの発言を聞いた

しかし、野村氏が週刊文春2004年4月22日号の取材に対し

「眼鏡の捕手は必要ないと言ったのは片岡、わしは古田を捕れと言った」

と述べている

片岡氏は野村氏がヤクルト監督時代の9年間に、嫌味と変わる言葉に泣かされ続けたと書いている

基本的にはスカウトは陽の目に当たらない

現場に何度も足を運び、選手を見続け、他の球団が見向きもしない無名の選手を発掘し、なんとか獲得にこぎつけた選手が大成しても、多くの場合は

「俺が育てた」

と監督やコーチの手柄になる事が多く、選手が活躍しないと

「スカウトがろくな選手を獲ってこない」

と指導能力を棚に上げ、チーム弱体の責任をスカウトに転嫁される事も多い

まえがきには、2010年度のドラフト会議と指名された選手の評価が書かれており

「斎藤祐樹が球界を代表する投手になる確率は限りなく低い」

と断言している

2010年ドラフト会議にてヤクルトは斎藤佑樹を外し、外れ1位で山田哲人を獲得した

しかし、入団から2016年終了時点での斎藤、山田両選手の成績を見ると

「ヤクルトは斎藤を外して山田を獲得して本当に良かった」

と思うでしょう

いくら有力選手を獲得したとしても

怪我、コーチとの相性、チーム方針など様々な要因が重なり合い、実力を発揮できぬままプロ野球の世界を去る選手

逆に期待されずにドラフト下位で入団したが、本人の自らの努力で素質を開花し、チームを代表する選手に成長する

など、著書にも記載がありますが、

巨人へ逆指名で入団した高橋由伸争奪戦の舞台裏も興味深い

当時の報道では、契約金上限は1億5千万円でしたが、実際に有力選手に逆指名してもらうために多くの資金が必要だった

ヤクルトの高橋由伸獲得予算は総額10億円

高橋由伸の父親の土地の焦げ付きが60億円

高橋本人はヤクルトを希望だったが、家族会議の後、巨人逆指名へ

また、目立たないが能力や伸びしろを見抜いた例として

ノーマークだった 土橋勝征(1986年ドラフト2位・千葉県立印旛高校)
キャッチャーとしては体が小さかった 飯田哲也(1986年ドラフト4位・拓大紅陵高校)

についての記載も面白い

逆に実力を見抜けなかった

落合博満(打撃は素晴らしいが、守備が下手。DHがないセリーグのヤクルトでは守るところがない)

掛布雅之(パンチ力、積極性は素晴らしいが体が細くて小さい)

そんな選手達の話もあわせて、スカウトとしてのやりがいと難しさが伝わってくる