マレー沖海戦

昭和17年10月10日発行

日本教育紙芝居協会作品

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

昭和十六年十二月八日。

宣戦の大詔渙発さる!

大東亜に あくなき侵略と暴威を

揮ひ續けた米英に對し、

畏くも 宣戦の大詔が 渙発され、

「忠誠武勇」の皇軍は

陸に

海に

空に

時を移さず 猛撃の火蓋を切つた。

  (ぬきながら)

(報道調で)

我が國を とり圍んで

ABCDラインと豪語し、

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(報道調で)

ハワイには 強大を ほこる

アメリカ太平洋艦隊、

シンガポールには 新しく集結した

イギリス東洋艦隊、

いづれも虎視たんたんとして

我を ねらつてゐる。

さればこそ、戦の火蓋は

先ず 我が 海鷲の精鋭が

悪天候を 物ともせぬ

ハワイ大空襲に始り、

開戦第一日、

早くも アメリカ太平洋艦隊を撃滅したが、

(ぬきながら)

(語調を少しかへて)

頭を廻らせば、

イギリスが 東洋の

ジブラルタルと頼むシンガポールには

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(力づよく)

世界一とほこる 最新鋭艦

プリンス・オブ・ウエールズが

僚艦レパルスを ひきゐて、

はるばる 地中海から

開戦一週間前の 十二月一日に馳せつけてゐる。

プリンス・オブ・ウエールズは

この年四月竣工したばかりの 浮沈戦艦。

マレー半島に 敵前上陸を敢行した

皇軍の背後を襲はんと、

三萬五千噸の巨體は

密かに シンガポールを出てんとした。

(ぬきなら)

(語調をかへて)

戦ひは 機先を制すべし。

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(やや聲低く)

ひそかに監視の眼をひからせてゐた 我が潜水艦は、

十二月九日午後 遂にウエールズとレパルスが

三隻の駆逐艦を ともなつて

出港したのを 発見したのである。

ここで一発 魚雷をお見舞い と、

勇士の心は逸やつたが、

距離が遠過ぎる。

直ちに「敵艦発見」の無電は

我が海軍航空隊の前進基地に飛んだ。

(ぬく)

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(喜びの感情をこめて、聲高く)

「発見!」

「敵艦発見!」

今か、今かと待ちかまへてゐた 我が航空基地は、

俄然 色めき立つた。

この日のために、

ただ この日のために 重ねて来た

猛訓練だつたのだ。

「各部隊 直ちに 出発用意!」

(はやく ぬく)

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(力づよく)

爆音は熱風を切つて

轟々と響き渡り、

勇士の胸は プロペラーよりも快く踊る。

必殺の一弾を 必死に抱き、

まなじりを決して

南國特有の 荒天を押しきつて進む。

(ぬきながら)

(語調沈めて)

が、行けども行けども 漠々たる密雲に覆はれて、

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(語調沈めて)

進まうにも、下を探ろうにも

まるで見通しが きかないのだ。

雲の下では 激しいスコールが

物すごい音をたててゐる。

(やや高めて)

次第に迫つて来る夕闇の中に 赤く揺れるのは、

僚機の燈火が光つてゐるのである。

「視界零!」

「無念!」

萬事休す!

隊長機からは「反轉歸還」の命令がでた。

残念ながら 引返さねばならない。

(ぬきながら)

重苦しい心と 腹立たしい思ひを抱いて

一たんは 基地に歸るより外は無かつた。

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(しづかな)

この一夜の どんな長かつた事であろう。

勇士達は 夕食をとる元氣もなく、

あだかも 自分達の罪かのように 眠らない。

(語調改めて、やや高く)

しかし

天祐は 我に在る!

勇士よ 欣べ、

第二の無電は 夜明の太陽と共に来た。

十日午前三時四十分!

我が潜水艦は 再び

イギリス艦隊の發見を 報じて来たのである。

(ぬく)

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(力づよく、命令)

「必ず 撃滅するのだ!」

(短い間)

敵主力艦は アナンバス諸島以北より

シンガポールへむけて

二十節のを以つて 航行中である

今ぞ 日頃の訓練に ものいはす

千載一隅の 好機が来たのだ。

「全力を盡くせ!」

(短い間)

「出發!」

(はやく ぬく)

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(力づよく)

午前七時三十分。

再び しッかと魚雷を抱いた 我が雷撃隊、

必中の巨弾を積んだ爆撃隊は、

相次いで勇躍 基地を出發した。

昨夜の悪天候にひきかへて、

今日の空は まさに神助、日本晴だ。

涯の果てまで澄み切つた 青一色の中、

エンジンの音も彈めば、

勇士の頬も 赤く燃え上がる。

(間)

(ぬく)

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(語調やや沈めて)

何時間 飛んだであらう。

敵艦の姿は なかなか 発見されない。

アナンバス諸島南方五十浬の地點で、

確に 追ひつける見込であるのに。

心が焦だつ、無性に焦だつ。

千載一隅の好機なのに!

然し、落ち付け。あせるな。

天祐は 必ず 我に在る!

三番索敵機は 高度を下げて、

ぐッと 海面に近よつた。

(はやく ぬく)

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(力づよく、発見した喜び)

居た!居た!

レパルス、ウエールズ。

駆逐艦三隻を先行させた巨艦、

ウエールズ、レパルスが、

見る眼も鮮やかに 白波を蹴立てて

南方指して 堂々と進んでゐるではないか!

”敵主力艦見ゆ。

北緯四度 東經百三度五十五分”

無電は叩かれた。

我が海鷲の大編隊は 直ちに敵に迫つた。

(ぬく)

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(咏嘆調・力づよく、ゆつくり)

見よ!

旗艦プリンス オブ ウエールズのマスト高く

戰闘機は ひるがへつた。

装甲甲板の厚さ 無類。

ドイツ空軍の 直擊彈を喰つても

突き破れなかつた軍艦ウエールズ。

さればこそ、敵將フイリツプス司令長官は、

我が海鷲の 近づくと見るや

堂々 迎へ擊たんとして、

ポンポン砲は 早くも 火蓋を切つた。

五分と五分の態勢だ。

ハワイ空襲を 一方的奇襲戦闘とすれば、

之こそ 互に名乗りをあげて

正しく仕切つた 四ッ相撲である。

隊長の命令一下、

我が攻撃隊は 得意の攻撃に移つてゐる。

航空魚雷は 生き物のように

敵艦目がけて 迫つて行く。

彼も亦 高角砲、副砲、ポンポン砲の一齊射擊 。

一分間 六萬發の彈幕を張つて 攻め来るもの

一機の寄せつけずと  應戰につとめる。

(やや早く)

クワンタン沖の 海と空は、

忽ちにして修羅の巷。

(はやく ぬく)

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(力づよく)

突如 レパルスは

濛々と 火焔を噴き出した。

首先、尾つぼ、どてつ腹、

我が必中彈を喰つたのだ。

(語調を沈めて、早く)

此の時、

滿を持してゐた 我が雷撃隊は、

(はやく ぬく)

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(力づよく、一氣に)

切つてはなつた矢の如く、ただ一すじに

航空魚雷を叩き出す。

一隊は 右から ウエールズへ!

一隊は 左から レパルスへ!

スコールのような 敵彈幕をつき破つて

三番機が 最後のとどめを!と

レパルスの 甲板めがけて 突込んだ。

(はやく ぬく)

(大きく)

グアーン!

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(力づよく)

三番機は 魚雷を抱いて 見事 自爆したのだ。

レパルスは

眞黑い煙を 嵐のやうに吹き出して、

グッと 傾むくと見るや、

この三萬二千トンの主力艦は

轟然、艦尾を高くあげ、

(ゆつくり)

海中深く 沈んでゆく。

(ぬく)

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(語調をやや静めて)

この時 プリンス オブ ウエールズは

黑煙を吐き 左に大きく かたむきながらも、

遁れ去ろうと 必死である。

(力づよく)

のがさじと 我が編隊陣は、

この「不沈戦艦」の上を

大きく 旋回した。

(はやく ぬく)

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(力づよく)

ウエールズは 戦史始まつて以来 始めての

主砲の砲門 全部を もつて、

我が航空陣を 粉砕せんとする。

あらゆる砲門は すべて空に向つて 開いた。

今に到つても 尚 我と戰はんとする

英國海軍 最後の足掻き。

我全機は ことごとく

ウエールズの上を 一齋に覆つた。

(はやく ぬく)

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

(力づよく)

忽ちウエールズは

轟然たる爆音と共に。

茶菓子の火柱を吹き出し。

大爆發が起つたと見るや、

(ぬく)

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(力づよく)

巨體は艦尾から 徐々に 沈みはじめた。

(ゆつくりと 報道調に)

イギリス海軍の誇り、

プリンス オブ ウエールズ 撃沈さる。

(ぬく)

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(しづかに 力をこめて)

かくて 世界に豪語した

沈まざる戰艦は

司令長官フイリツプス大將を載せたまま

マレー沖の藻屑となつたのだ。

(しずかに ぬく)

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(全く語調を改めて)

翌日、

一隊は再び 昨日の激戰場の上を飛び、

靜かな靑い海に 大きな花束を投げた。

思へば ロンドン條約以来、不撓不屈、

鍛へに鍛へた 我が海軍魂は、

イギリスが 世界に向つて豪語してゐた

不沈戦艦 ウエールズを

マレー沖深く 沈めてしまつたのだ。

雄々しくも ここに散つた

歸らぬ三機の 我が海鷲。

今は 神となつて 我が國土を護る!

(短い間)

(ぬきながら)

(おごそかに)

戰は勝たざるべからず、

然して、

マレー沖海戦 紙芝居 Sinking of Prince of Wales and Repulse Naval Battle of Malaya picture story show Japan

勝利は恒に 吾が祖國日本の上に輝く。

十年、二十年、或ひは百年。

戰ひは今後 何年つづくとも、

勝つて兜の緒をしめよ。

前線 銃後 一団となつて、

輝かしい最後の勝利を獲ち得る日まで

どこまでも 進まなければならぬ。

(調子をかへて)

今や 大東亜の 海に 陸に 又空に、

忠勇なる皇軍将兵は 身を鴻毛の輕きに比し、

君國の為めに 戰ひつつある。

(少し高めて)

此れに こたへて 我々銃後國民が

皇國に盡くす奉公の道!

我等が燃ゆる愛國の熱情を 戰ひの費用を作り出す

(ゆつくりと)

貯蓄に 債権に 現はさう。

嘗ては夢と思はれた 大東亜共榮圏の建設も、

今や 我等の手の中に あるではないか。

(しづかに ぬく)

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